July 17, 2007

初めての事を普通の出来事に

2人目の娘が、脳挫傷を伴ってこの世に生を受けた17年前、担当医に
「もって3日。奇跡が起きても重度の障碍を負いますから、その覚悟を」
と宣告されて、最良の1日が最悪の1日になってしまったあの日以来、
自分の夢を実現させても、誰の夢の実現を手助けしても、障碍者のそれ
と向き合わない限り、自分がアンフェアに思えてならない。

幸いにも、娘には本当の奇跡が起きて、何の障碍もなく元気に育った
けれど気持ちに変わりはなく、数年前から、徐々にそのための活動を
展開していますが、先日、海の向こうから素晴らしいニュースが届いた
ので、お知らせいたします。


2007年7月14日。

陸上の国際大会「ゴールデンガラ」で、2004年のパラリンピック
金メダリストの オスカー・ピストリウス選手(20歳)が、男子400m
のB決勝(開催地であるイタリア国内の選手が出場するレース)
に招待出場し、銀メダルを獲得しました。

ピストリウス選手は両脚にカーボン繊維製のスポーツ義肢をつけて
走るため、国際陸連は現在「バネや車輪など選手に利益をもたらす
器具の利用を禁止する」というルールに抵触しないかどうかを調査
していますが、その結論次第では、多くの障碍者にとって、大きな
道が開かれることになるかもしれません。

現在、オスカー・ピストリウス選手は、北京オリンピックへの出場を
目指してトレーニングをしています。


「初めてのこと」は、たいへんな向い風の中に挑み、ドン・キホーテ
と呼ばれながら、心の血を流しながら、それでも突き抜けていく誰か
と、それを支える多くの力によって成され、その後に続いていく多くの
勇気ある者・信じる者達によって、いずれ「普通の出来事」へと昇華
していきます。

いつか近い将来、障碍をハンディキャップとしてではなく、個性として
誰もが普通に受け入れて1つの輪を作っていける社会になってほしい、
と切に願っています。

普通になることは、彼らから「絶望」を消し去ると同時に、「逃げ道」も
奪うことになりますが、その厳しくもフェアなフィールドこそが、誰もが
望む究極の社会のあり方ではないか、そこで互いに差し出す手こそが
純粋な思いやりのカタチなのではないか、と思うのです。

本当の「夢」や「希望」を与えることとは、そういうことだと思います。


子供達が、そうしたことを普通に体感して育つ学校教育環境や、大人
達が普通にそれを実践して見せることで教えていく社会文化の実現に
おいて、我々にできることが確実にあるはずだ、と確信しています。