November 28, 2007

プロフェッショナル

ジャイアンツの往年のある名監督は、かつて、ミーティングでコーチ陣を
集めて、こんな指示を出したそうです。

 「その選手の長所が分かるまでは、
  絶対に叱らないこと。
  フォームをいじらないこと。

  そして、コーチが自己の評価を求めないこと」


何事でも、目につく欠点を直すことを最優先すると、得てして長所まで
台無しにして、本来の魅力や良さを色あせさせてしまうものです。

同時に、選手が何かを成した時、それを選手自身の手柄にすることで
自信を与え、自立した本物にしていくことができるのでしょう。


私も経営コンサルタントとして、クライアントの問題点を指摘したり
求める答えを与えてしまわないようにしていますが、クライアントが
自分で悩み苦しみ、最後に「自らの手で答えを掴み取る」という最高の
「経験」、「成長」という財産を手にする機会を奪わないためです。
そして、成果を全てクライアントの努力の賜物と位置づけるためです。

コンサルタントが最優先すべきは、クライアントの真の成功ですから。


これって、教育の本質とか、子育てと似ているんですよね。

学校の先生は昔は聖職と呼ばれていましたが、何を最優先させるのか、
という判断基準において、親としての子育ても聖職だと思うんです。
そしてもちろん、ビジネスもそうあるべきだと。

つまり大切なのは「プロ意識」なのだと思います。


数年前、芸能学校を経営していた時、俳優の地井武男さんを特別講師
にワークショップを行なったのですが、実はその3日前に、地井さんは
最愛の奥様を亡くしたばかりでした。

翌朝まで泣き続けた後に、朝のワイドショーのコメンテイターとして
笑顔で番組出演をして、自身のことはマスコミに伏せて仕事をこなし、
そしてワークショップもキャンセルせずに来てくださいました。

冒頭、地井さんはその事実を告げ、若手俳優たちに言いました。

「役者として成功するためには、親の死に目にも会えない覚悟がいる。
 もし今日、僕が身内の不幸を理由に仕事をキャンセルしたら、君達に
 間違ったことを教えてしまうことになる。 だから僕は来たんです」


 そのジャッジは、お客様の本当の必要を最優先しているのか。
 そのジャッジは、子どもの本当の成長を最優先しているのか。
 そのジャッジは、大切な人の本当の幸せを最優先しているのか。


つまりは、どの立ち位置にいても「プロ意識を持つ」ということ。
目の前にいる人を大切にするということ。

それがすなわち、自分自身を大切にするということ。