May 23, 2011

自尊感情・自己肯定感

財団法人「日本青少年研究所」の国際調査(平成14年)によると、
「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」との設問に対して
「よくあてはまる」と回答した中学生は、アメリカ51.8%、中国49.3%
であったのに比べて、日本は8.8%と極端に低かったそうです。

今年、東京都教育委員会が公立の小中学生・都立高校生を対象に
「自尊感情」についての調査を行なったところ、中高生の5〜6割が
「自分」を好意的にとらえていない結果であったそうです。
また同調査結果では、小学一年生の84%が肯定的な回答をしていた
ものの、学年が上がるにつれてその割合は低下し、六年生では59%
となっていたそうです。

小学校入学時には、おおよそ自分を好意的にとらえられていたもの
が、義務教育9年間で、自尊感情・自己肯定感が大きく低下していく。

このことについては、「謙虚さ、控えめを良しとする日本の文化がまだ
根強いのが一因」とする指摘もあります。
「子供が成績を他人と比較して、すぐに『自分はダメだ』となる傾向も
見られる。これは日本だけの特徴で、諸外国に比べて自己評価が低い。
もっと自分に自信を持たせるような教育を進める必要がある」とのこと。


だとするならば、秀でた人は何もかも優れて素晴らしく、ダメな人は
何もかも劣っていてダメなんだ、という間違った認識を持たせない教育
が、学校でも家庭でも、職場でも必要なのだと思います。

つまり、
何もかも優れた素晴らしい人なんてなかなかいなくて、秀でた人は、
やはり何かが劣っていたりダメだったりしたけれど、自分の得意なことや
好きなこと、打ち込めるものを見つけて伸ばした人なんだ、ということ。
そして、
君にはこんなに素晴らしい良さと個性があるじゃないか、ということ。
だから、
君だってきっと素晴らしい何かを成すことができるんだよ、ということ。
それは、
他人と比較するものじゃなくて、自分が心から充実して満たされる未来
に向けて、胸をはって生きていいんだ、ということ。

自尊感情・自己肯定感を持つには、たとえ今の状態は不十分であっても、
たとえ他人より歩みが遅くても、自分が肯定的にとらえることができる
未来に向かっていると思えること、ベクトルを信じられることが大切です。

そして、それを教師や親が子ども達に「説明」するのではなく、「体感」
させるのであれば、大人自身が心底そのように思い、それを体顕していく
こと、見せていくことが必要なのだと思います。


先の報告の後、震災が起こりました。

震災後の様々なシーンで、日本人は素晴らしい、と世界から賞賛もされ、
我々自身も誇りに思ったことや、逆に、日本人・日本企業・日本政府の
こういう体質が最悪なんだと失望したこともあるでしょう。

いずれにしても、この国はこれから大きく変わる必要があります。
その未来を担う子ども達が、自信を持って前を向いて生きていけるよう、
まず大人が、社会を変えていかなくてはならない、まず自分自身を変えて
いかなくてはならないのだと思います。


子ども達が、「この国に、この時代に、この両親の元に、この自分として
生まれてきて良かった」と、笑顔で胸をはってくれるように。