某TV番組を見ていて、ふと30年以上前のことを思い出した。
その日、自宅近くの道路で、歳の離れた妹が自転車の練習をする
相手をしていたところ、急に脇道から車が飛び出してきた。
僕はとっさに飛び込んで、妹を抱きかかえて倒れ込んだ。
車はそのまま走り去り、妹は全くの無傷だったのだが、僕は
両肘と両膝をボロボロに擦り剥いて血だらけになり、傷口には
無数の砂利が入るような怪我をしてしまった。
その後何度か、切開して砂利を取り除く治療をしたことで、僕の
肘や膝にはかなり傷跡が残ってしまったけれど、それは妹を守る
ための“名誉の負傷”なのだという自負さえあった。
ずっと長い間、その出来事そのものさえ忘れていたけれど、今日
思い出したのは、飛び込む瞬間のこと。
人間は危機に瀕した時、脳があまりの速さで情報処理をすること
によって、数秒間、すべてがスローモーションになるそうだが、
あの時、僕の脳裏をよぎったのは、病院で初めて妹を抱かせて
もらった日に、母が言った言葉。
「太陽のように明るくて、みんなを元気にしてくれる子になって
ほしい、っていう想いを込めて、この名前をつけたの。だから、
この子がそうなるように、お兄ちゃんとして守ってあげてね」
あの瞬間、その言葉が僕を動かし、飛び込ませたのだ。
時が流れ、僕はこれまで4人の子供達にそれぞれ名前をつけた。
こんな子に育ってほしい、という想いを込めて。
こんな風に育てていくぞ、という誓いをたてて。
事業化したいくつかのビジネスには、社名(屋号)をつけた。
こんな会社に育ってほしい、という想いを込めて。
こんな会社に育てていくぞ、という誓いをたてて。
お父さん、お母さん、経営者や事業主の方々・・・。
誰だって、想いを込めて、誓いをたてて、名づけたことでしょう。
その想いは、今も色褪せることなく抱き続けているだろうか。
その誓いは、1日たりとも忘れずに実践し続けているだろうか。
親として、経営者として。
子供を呼ぶ(叱る)時、事業展開を考える時、その名前を口に
する時には、今一度、あの日の想いと誓いを思い返してほしい。
そして、今の自分は、あの日の自分に対して胸を張れるだけの
生き方をしているのか否かを問うてほしい。
その程度で挫折するような、
その程度で自信を失うような、
その程度で諦めるようなあなたには、
あの日の自分から大切なものを奪い取る資格なんかない!
自分が吹き込んだ命を、命がけで守り育ててください。
大切な人の大切なものを、命がけで守り育ててください。