電通の元社長で、日本広告業協会会長などを務めた
成田豊さんが11月20日に死去しました。
今さら説明の必要などいらない偉人ですが、かつて
ドロップアウトした1人の若者の夢に耳を傾け、可能性
を信じて拾い育ててくださった御恩は忘れません。
たくさんのことを教えていただきました。
まだ道半ばですが、これからも生涯忘れません。
ご冥福をお祈りいたします。
中学に入学してすぐに、何か部活動をやろうと思って
ひととおり全部の運動部を見学してまわった。
小学校からの同級生と一緒に2人でまわったのだが、
まわった中で1人、とても印象に残った先輩がいた。
3年生の澤田先輩。
彼は、僕が見学兼球拾いとして拾った球を放り返す度に
「ありがとう」「サンキュー」と必ず声をかけてくれた。
片づけを手伝った時も、丁寧に教えてくれて、やっぱり
「ありがとう」と言ってくれた。
どこの部でも、準備や片付けや掃除などを手伝う場面が
あったのだが、その行為に対してちゃんとお礼やねぎらい
の言葉をかけてくれたのは、彼だけだったのだ。
見学して気づいたのは、「競技をやりたい」という気持ち
以上に、「こういう人になりたい」と思った自分がそこに
いたこと。
どんな相手も分け隔てなく、人として接することができる人、
ささいなことでもその場でお礼を言える人、人を認めること
ができる人。 そういう人に自分もなりたいと思った。
入部してからも、完全初心者の僕に1つ1つ丁寧に教えて
くれた先輩のことを尊敬して、高校入試では最初から
澤田先輩が通っている高校以外に見向きもせずに受験。
大好きな先輩に早く会いたくて、また先輩に教えてほしくて、
いてもたってもいられず、入学式の翌日からすぐに先輩の
もとへ走った。
覚えが遅いくせに生意気で、今思えばかなり面倒くさい
後輩だったと思うけれど、澤田先輩は一度もキレることなく、
いつも笑顔で指導してくださり、卒業してからも、何度も
飲みに連れていってもらうなど、面倒をみてくださった。
先輩のたった一言「ありがとう」は、確実に僕の人生を
変えてくれました。
疲れている時、何かがうまくいっていない時・・・、つい、
相手が家族だから、子どもだから、年下だから、親しい間柄
だからと、そのたった一言に注意を怠ってはいけない。
言葉は時として人の人生を変えてしまうほどの力を持っている。
だからこそ、
どんな時でも、誰に対してでも、まっすぐに向き合って言葉を
発する必要がある。
目の前にいる人の未来と可能性を軽んじてはいけないのだ。
ありがとう。
先輩には、いつかまたお会いして、たくさんお礼を言いたい。