November 12, 2014

優しさを配ってごらん

人は1日に4回HUGされないと死んでしまう、と言う。
 
孤独で、生きていられなくなってしまうと言う。
 
だから大切なあなたには、毎日ぎゅうっとふれずにはいられないのだよ。
 
 
 
  <以下、水谷修さん(夜回り先生/元高校教諭)のインタビュー記事> 
 
 
  「死にたい」「手首を切った」、
  そんな相談に水谷さんはどのように答えているのですか、の質問に
 
  「水谷です。君が死ぬのは哀しいです」
  それだけです。

  すると大体、「ごめんね、先生を哀しませて。でも死にます」と返ってくる。
  これでこの子は死にません。

  (なぜです?)

  意識が外へ向きます。
  彼らの意識構造は閉鎖的で内へ向いていますから、それを外に向けさせる。
  それだけでとりあえずは助かります。

  そして僕は一つのお願いをします。
  「周りのみんなに優しさを配ってごらん。何でもいいんだよ。
  お父さんの靴磨きでもいいし、洗濯物を畳むのでもいい」
 
  「そんなことして何になるの」

  「いいから、まずやってごらん」と。

  二、三日後には、心ある親なら子どもの変化に気づきます。
  「先生、お父さんが靴を磨いていたのを気づいてくれて、ケーキ買ってくれた。ありがとう」
  というようなメールや電話がくる。
 
 
  そこで今度は親と話します。
  お母さんに毎晩一緒に寝て、触れ合ってください、とお願いするのです。
 
  日本の小児科医の父と呼ばれた内藤寿七郎先生は、「子どもは三歳までに決まる」
  と言いました。 三歳までにどれだけ触れ合って、抱っこしたかで人生が決まると。
 
  いま、子どもを全然抱いていないでしょう。
  保育園に預けても、数人の先生では子ども全員を十分に抱くことはできない。
  車ではチャイルドシートなんかに乗せて、全然抱いていないですよ。

  たとえ十代になっても二十代になっても遅くはないから、お母さんに彼らと触れ合って、
  抱き締めてほしいとお願いするのです。
  抱き合えばいいんです。
  触れ合えばいいんです。
  言葉は要りません。
 
  大人たちは頭を使い過ぎますよ。
 
 
  子どもたちが待っているのは、考えてもらうことじゃない。
  そばにいてくれることです。
  それを頭で考えて、言葉でこね繰り回すから、むしろ言葉で子どもたちを傷つけて
  追い込んでいる。 いま世の中、ハリネズミだらけだ。
 
  教員と生徒も、親と子も、社会全体がそうです。
  愛し合って認め合いたいのに、針を出し合う。
 
 
  例えば、娘が深夜一時頃帰宅した。
  親はもう泣きたいくらい心配なんですよ。
 
  玄関のドアが開いた瞬間、本当は、「やっと帰ってきた。心配していたんだぞ」
  と言いたいのに、「何やっていたんだ、こんなに遅くまで!?」と言ってしまう。
 
  一方、娘は家に帰ったら、
  「遅くなってごめんね」と言おうと思っていたのに、親に強く言われたものだから、
  「うざいんだよ!!」と言ってしまう。
 
  「何だ、その口の利き方は。おまえなんか帰ってくるな!」
 
  「分かったよ、出てけばいいんでしょ!!」……。
 
  素直になればいいんです。
  そして、言葉を捨てればいい。
 
  教育に言葉は要らないのです。
  



  



Posted by exceedblog at 21:43clip!あなたから誰かへ 
November 08, 2014

運命の一球

 
かつて、プロ野球オールスター戦という夢舞台で、9打者連続奪三振という偉業を
成し遂げたのが、江夏選手。
 
選ばれた選手だけが出場しているため、対戦相手は猛者ばかりであり、しかも、
オールスター戦では、投手は3イニングまでしか投球することができないルールが
あるため、3イニングで計9つのアウト全てを三振で奪取したことは驚愕である
と同時に、決して破ることが出来ない記録である。
 
その記録に唯一迫ったのが、怪物と言われた江川選手。
打者を8人連続で三振に斬って取って、9番目の最後の打者を2ストライクまで
追い込み、ついに伝説に並ぶかという運命の一球で、彼はカーブを投じた。
 
結果、打者は球をバットに当てて、ゴロでアウト。
3イニングは終了し、江川選手の記録は8打者連続奪三振にとどまった。
 
 
。。。なぜストレートで打者と真っ向勝負をしなかったのか。
 
「最後にプレッシャーに負けて、かわしにいったところが江川らしい」
「そこが、ここ一番に強い江夏と、ここ一番に弱い江川の違いだね」 
「いや、誰もがストレートだと思うところだから、裏をかいた作戦だ」
「要するに、逃げたんだろ」
 
当時、プロ野球関係者、プロ野球ファンの間では、たいへん盛り上がった
懐かしい話である。
 
 
この時、僕は、数日間ずっとこのことを考え続けた。
気になって仕方がなかった。
 
怪物と言われた選手が、そのキャリアのピークの時に、この夢舞台で、
打者8人を連続三振に取るという、二度と無いかもしれない状況まできていて、
。。。なぜストレートで打者と真っ向勝負をしなかったのか。
 
ずっと考え続け、そして、ふいに気づいた。
もしかして。。。!!
 
 
それから10年経って、TV番組で、江川選手がこの件について口を開いた。
それまでは、何を言われても、何を聞かれても、笑ってごまかすだけだったが、
そこで初めて真相を語った。
 
あの時、打者も、誰もが、ストレートを投げると思っていた。
キャッチャーも、当然ストレートのサインを出していた。
そこへ、首を振らずに唯一の変化球であるカーブを投げ込むことで。。。
 
打者を三振に打ち取る。
しかし、キャッチャーが取れずにパスボール。
打者は振り逃げで一塁へ。
9つ目のアウトが取れないため、10人目の打者が打席に入る。
その打者と対峙することで。。。
 
決して破ることが出来ないはずの、伝説の9打者連続奪三振を超える、
10打者連続奪三振に挑む!
 
記録に並ぶのではなく、その先に挑む、唯一の可能性。
10人目の打者を打席に迎える夢の舞台を創り上げ、スタジアムを総立ちに
させる。。。その僅かな可能性に、全力で真っ向勝負を挑んだのだ。
 
逃げたのでもなく、かわしたのでもなく、超えるために、挑むために。
誰も想像できなかった、そこにある唯一の可能性に、全力で賭けたのだ。
 
 
後悔するかどうかは、結果よりもむしろ見つめた目線次第。
でも、そのプロセスは、いつもわかりづらくて、ただかっこ悪い。
 
わかりづらくて、かっこ悪かったけれど、僕は、その運命の一球の意図に
もしやと気づいた瞬間、鳥肌が立った。
 
 
 
今、この国は、世の中で認識されているよりもずっと窮地にある。
それはそのまま、地球全体が追い詰められているとも言える。
国という枠組みよりも大きな力による、奪い合い、騙し合い、潰し合い、の末路。
 
それに抗い、もっと強力な力を持って潰し合いの勝負を挑むのではなく、
超えられるかもしれない、その先を創れるかもしれない舞台を用意するために、

僕は、僅かな可能性に賭けて、誰よりもかっこ悪く、渾身のカーブを投げ込む。
 
 
  


  



Posted by exceedblog at 11:22clip!めざすべきもの